帰省

長すぎた梅雨が終わったかと思ったら、今度は猛暑が待っていた。

昼間を避けて、夜の散歩に出掛けて、

歩道を歩いていると、何か落ちている。

近づいてみると、それは一輪の切り花。

買い物を終えた誰かが、帰路の途中に落としたものだろう。

もう辺りは夜を迎え、すっかり暗くなってしまっている。

落とし主が現れる可能性は低いと思った。

急に歩道に残された花が不憫に思えた。

 

帰り道、花が無くなっていたので、落とし主か誰かが拾っていったのだろうか・・・

そう思ったら、誰かが移動していたのだろう、

歩道沿いのマンションの花壇の縁に、花を見つけた。

なんとなく後ろ髪を引かれながらも、部屋に戻ってシャワーを浴びる頃には、花の事はすっかり忘れていた。

 

翌日、暑くなるのを避けて、朝早く散歩に出掛けると、まだ歩道沿いに切り花は落ちていた。

手に取ると、花は水分を無くし瀕死の状態。

そのまま持ち帰り、洗面器に水を溜め、弱り果てた花を入れて、水分を吸収しやすい様に水の中で茎を少し切った。

しばらくすると元気を取り戻していたので、グラスに移し替えた。

 

今年のお盆は、帰省せず、一人で過ごすと決めていた。

墓参りが気になっていたが、子どもから墓参りに行ったと連絡が有り、ホッとしていたところだ。

そんな時に、テーブルの上の一輪の切り花。

手を合わせると、遠く離れた所からでも墓参りが出来た様な気持ちになれた。

 

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