今年最初の山登りは、県境にある山を選んだ。
雪山はあまり登らないので装備に不安な点もあったが、昨日のうちにアイゼンだけは買っておいた。
登山口に車を止めて準備をしていると、山を管理されている人から話し掛けられる。
途中から雪が積もっているらしい。
2名の方が先に入山されていた。
登山ノートに記帳し、スタートする。
気温がとても低く、吐く息がとても白い。
ただ天気はとてもよく、風も無く、空気はとても澄んでいて気持ちがいい。
この山の中腹には神社があって、その辺りには樹齢何百年にもなる大きな木がたくさんある。
木のずっと上の方からカタカタカタと音がする。
早いリズムの規則正しい音。
何の音だろうと上を眺めていたら、下山されてきたガイドの人から啄木鳥の音だと教えてもらった。
この辺りだと結構多いとの事。
話しをしている間も、規則正しい音が聞こえる。
そうこうしている内に神社にたどり着いた。
ここは山小屋も兼ねた作りになっている。
それにしても何故こんな山の中腹に神社を祀ったのだろう。
ここまでやってくるにもかなり難儀するだろうに。
ただ山全体はとても神聖な感じ、分かるような気もする。
さらに登って5合目を過ぎた辺りで、水分を補給しようとザックを降ろした時に気になる出来事があった。
それがどうしても気になり、一旦車を止めた所まで下山することに・・・。
ただザックはその場に置いて、友だちには悪いがゆっくり先に進んでもらう事にした。
一気に下山し、一気に同じ場所まで戻る・・・。
最初は軽く考えていたが、その甘い考えのせいで後に大変な思いをした。
ザックを置いていた場所まで戻った頃は、息も上がり体中の汗腺が開いた状態になっていた。
濡れた服を脱ぎ、呼吸を整え、また登り始める。
友だちはどの辺りまで進んだろうか・・・?
7合目手前辺りから道が凍り始めた。
気を付けながら先に進むと、やがて凍りは雪に変わり歩きやすくなってきた。
ただペース配分を乱した山登りがたたって、先に進むのが辛い。
ちょっと歩いては休む・・・といった状態が続く。
初老の方が下山されたきた。
「もうしばらくすると辺りは真っ白になり、今日は頂上付近は青空がとてもきれいだよ」・・・と仰った。
どうやら友達も無事に先に進んでいるらしい。
急いでいるのもあるけれど、一度開いた汗腺は閉じることなく、寒いのに汗をかく。
止まってしまうと心が折れてしまいそうだ。
そうこうしていたら辺りは真っ白な銀世界に変わった。
カメラを取り出し、シャッターを切る。
疲れを紛らわすかのようにシャッターを切った。
2人目の人とすれ違う。
友だちは頂上付近にいるらしい。
気持ちは逸るが、疲れて倒木の上に座り込んでしまった。
もう、ここで下りてくるのを待っていようか・・・
しばらく放心状態にして、リセットしていた。
ザックからチョコレートバーを取り出し2本食べて、温くなってしまった珈琲を飲んだ。
グミを口の中いっぱいに詰め込み、残りはポケットにしまい込む。
体力も少し回復したところで、少しづつ歩き始めた。
上の方から友だちが大きな声で呼んでいる。
辺りは真っ白な銀世界。
風はほとんど無く、気温は低いが、日差しがあって暖かい。
後10分ぐらいで頂上らしい。
一旦上を目指したが、途中で止めて友達が待っている場所まで戻ってきた。
なんだかもうここでも良いような気がしていた。
濡れたシャツを着替え、真っ青な空を眺め、食事をした。