まだ子供だった頃、週末になると毎週のように家族みんな車に乗って、田舎の祖母の家に泊りに行っていた。
両親は朝から晩まで忙しく働いていたが、母にとって実家に帰る時が一番の楽しみだったようだ。
子どもながらに、仕事を忘れゆっくりくつろいでいる親を見るのは、なんだかうれしかった。
私は夏休みなると毎年のように、祖母の家にひとり預けられていた。
口うるさい親から離れ、毎日好きなように過ごす。
思うに今の私はこの頃の経験の中で、自分の価値観を見出しすようになったのではないだろうか・・・。
宿題もそこそこに、朝から晩まで遊びまわっていた。
近くの沼でイモリを捕まえたり。
どんかっちょ(※ドンコ・・・今思うと凄いが当時は祖母が唐揚げにして食卓に出ていた。)と呼んでいた魚を釣ったり。
ひみつの森にカブトムシを捕まえに行ったり。
近くのガキ大将に連れられ、とうもろこし畑から失敬してきたとうもろこしや、家から持ってきたソーセージを、山の中で火を起こして食べたり。
にわか雨が来て、いもの葉っぱを傘にして家路を急いだり。
夕方になるとかまどに薪をくべてご飯を炊いて、ご飯を食べた後はお風呂に薪をくべて、湯につかるのだ。
そうやっていると一日なんて、あっという間に終わってしまうのだった。
12歳の夏は祖母の家まで、一人で自転車で行った。
友達と校区外まで時々遊びに出掛けたりはしていたが、それまでの距離とは比較しようがない。
当時の私にとってはまさに冒険だった。
いつも父が運転する車で通っていた道を、自分が漕いですすむ嬉しさ。
何だかとっても大人になったような気がした。
祖母の家までは、とても時間が掛かったように思う。
いつごろから道まで出ていたのだろう・・・。
祖母が心配そうに外まで出ていた。
冒険をやり遂げた自分に満足した。
あれから何十年・・・?
祖母の家までサイクリングに出掛けた。
祖母の家のふもとにある町からの登り道。
カブトムシをたくさん捕まえたひみつの森。
祖母と一緒に、ふもとの町で行われている夏祭りの花火を見た峠。
当時から比べると道は広くなったが、雰囲気は昔とそんなに変わっていない。
変わった事と言えば、近くに城跡が見つかって当時を復元して立派な建物が出来た事。
ある年に台風が来て祖母の家が壊れ、その後よその県に住む自分の娘の家に引っ越して行ったので、その後は近所の人に土地は管理してもらっている事。
祖母はずっと昔に亡くなったし、管理していた近所の人も亡くなったと何年か前に聞いた。
祖母が住んでいた家の後には夏野菜が植えられ、花がたくさん咲いていた。