通り慣れた道の夕刻時、いつもは渋滞を避ける為にハンドルを切って裏道に入るのだが、視界の先のクラシカルなテールをした車が気になり、そのまま真っ直ぐに車を走らせた。
白いコンバーチブルは交差点の左折のレーンで信号待ちをしている。
左後方から近づくと美しい流線型に目を奪われた。
美しい木目のメーターパネルが見て取れる。
フロントフェンダーに三角形のエンブレムも確認出来た。
1967年から1970年までの間に、337台が生産されたと云う。
時は昭和の40年代初め。
まだ日本も豊かではなかった頃。
時代の象徴として生産された車。
今の時代の高級車にはない、優雅で気品溢れる雰囲気を持っている。
どのアングルから見ても美しい車。
ハンドルを握っているのは長い髪の美しい女性で、私はバーチカルツインのエンジンを持つ古い英国のオートバイに乗っていて、彼女と目が合ってしまった・・・。
そんな片岡義男の小説に出てきそうなシチュエーションだったらいいんだけど、残念ながら現実は程遠い。
声を掛ける事はしなかった。
子供の頃、一日に黄色のビートルを3台見たら夢が叶う?(2台だったかな・・・)なんて言っていたが、偶然性ではまるで比較にならない。
実際に走っている車を見るのが初めて。
興奮を隠し切れない・・・。
はて、ボンドガールは誰だったっけ?
後になっていろいろと調べていたら、レプリカが作られている事を知った。
今となってはオリジナルかどうかはわからない。
いづれにしても目にした物は息を飲むほど、美しい車だった。