こわれもの

子どもの頃、集団登校で使っていた神社。

寒い朝は、近所のおじさんに焚火をお願いして、その中に小石を投げ込んだ。

熱くなった小石をハンカチに包んで、カイロ代わりにしてポケットに突っ込んだ。

かくれんぼに、ビー玉はじき。

正月近くになるとコマを回して遊んだ。

子どもの社交場だった神社。

鳥居を背にして小石を投げて上に乗ったら、その日は一日良い事があるとみんな信じていた。

散らかった部屋の中から、必要なものを持ち出してやった。

必要ではないけど、思い出があるものも持ち出した。

三島由紀夫谷崎潤一郎も連れ出してやりたいが、見つからなかった。

もう、そう時間も残されていない。

全ては持ち出せない、ノアの箱舟の様なもの。

連休の合間に友だちを誘ってサイクリング。

数時間走ったら、何もなかったように平和な日常がある。

食事を済ませ、木陰の下の石のベンチに横たわって昼寝をする。

5月の風は心地よい。

木漏れ日の先にひこうき雲が見える。

こわれものの画像

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