子どもの頃の夏休みといえば、毎日がカブトムシ採りと、学校の町内プールにかき氷の3本立てだった。
プールで泳いだ後は、学校の裏門の近くにある駄菓子屋でかき氷を食べて、頭をキーンとさせていたものだ。
夏休み期間中、近所の友だちではなく、町内が違う友だちと会うのはこのような機会が無いとむずかしかった。
日焼けを自慢しあったり、お互いの近況を確認したり。
駄菓子屋は子どもの大事な社交場なのだ。
夏休みは小銭を握りしめてかき氷を食べに行くものと思っていたが、今ではそうでもないらしい・・・。
二学期が始まり、昼間は子どもの姿も見かけなくなった今日この頃、郊外にあるかき氷屋さんに立ち寄った。
小学校の近くにある、夏限定のお店。
メニューはカキ氷と、ソフトクリームとサイダー。
梅雨が終わる頃、お店の入口にソフトクリームのディスプレイが置かれたらオープンの知らせ。
秋も深まったらひっそりと休業される、そんなお店だ。
すっかり涼しくなり過ごしやすくなった午後の昼下がり、お店には誰もいなかった。
お店の奥に人が良さそうな初老の女性店主が佇んでいる。
今日はいちごミルクがけとサイダーを注文した。
練乳がけの氷が170円、サイダーは1本110円。
先日寄った時はたくさんの子どもでにぎやかだったお店も、今はとても静かでゆっくりと時間が流れている。
「今年の夏は暑かったから忙しかったでしょう」と尋ねると、「最近はそれほどでもないんですよ」との返事。
今の小学生は部活や塾で、忙しい日々を過ごしているらしい。
規則正しい毎日から解放されるはずの夏休みでさえ、好きなように過ごせないなんて(そう思って毎日を過ごしていたのは私を含め、一部の子どもだけだったかもしれないが・・・)なんだか不憫に思えてしまう。
「それでも大きくなって都会に就職していった子どもたちが、帰郷した際にお店に寄ってくれて、懐かしい味って言ってくれると嬉しいんですよ」と仰っていた。
会話も途切れ、店内に再び静寂が訪れる。
店主は窓の外の遠くを眺めている。
私は目の前の赤く染まった氷を食べている。
お店の前には神社があって、とても立派なくすのきがある。
お店の近くはみどりがたくさんあるのに、蝉が全く鳴いていない。
夏は終わってしまったのだろうか…。
The Kinks / Sunny Afternoon
税務署のヤローが有り金ぜんぶ持ってちまった
ただっぴろい家に一人取り残されて
陽だまりの午後にまどろんでいる
どこに行くこともできない
あいつがなにもかも持ってちまった
この陽だまりの午後だけが俺のもの
救い出して! 引き上げてくれ、このどん詰まりから
うちにはでっぷりしたお袋がいて、俺をダメにしちゃうんだ
俺は楽しくやっていく
快適な生活を
真夏の陽だまりの午後にまどろみながら