夏なんです。

朝、ホテルのベットで目覚める。

 

エアーコンディションは止めていたので、簡素な部屋に生温い空気だけが澱んている。

ベッドから出る事が出来ず、ブルーな気分のまま時間だけが過ぎていった。

12時間かけて山を越えてきたが、昨日の夜から体調が優れないままだ。

 

身支度を済ませ、小雨の中スタートする。

通り雨をやり過ごす時に、老夫婦が営むお店でソフトクリームを買った。

夏の通り雨で偶然立ち寄ったお店での休憩。

冷たいソフトクリームが美味しい。

 

峠道でペタルを踏めない。

呼吸は乱れ、額から胸元に流れる汗が止まらない。

昼は肉料理を無理やり胃袋に収めた。

顔が火照って集中力も低下している。

 

自走を諦めて友だちと別れ、輪行する事にした。

一番近い駅は「玉来駅」。

玉来は以前山女魚釣りで何度か訪れた事のある、小さな町だ。

国道57号線から旧道に入り、昭和の佇まいの商店街を進む。

人通りがない商店街の交差点を左折し、駅までの500Mの登り坂を駆けあがった。

 

無人駅で一人、輪行の準備に取り掛かる。

自転車のアクセサリー類を外し、前後の車輪を外し、フレームと車輪を袋に収める。

下を向いて作業を行うと、額からおびただしい汗が床に落ちた。

灰色のコンクリートの床に汗がしみ込んで、黒色に変わってゆく。

 

ホームに据え付けてある4連のグラスファイバー製の赤い椅子に、一人腰かける。

雲の合間から太陽が顔を出し、辺りがまぶしくなると目に映る景色がゆらゆらと揺れ始めた。

蝉がワシワシと鳴いている。

列車が来るまでもうしばらく時間がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守の森は ふかみどり 舞い降りてきた 静けさが

古い茶屋の 店先に 誰かさんとぶらさがる

ホーシーツクツクの 蝉の声です

ホーシーツクツクの 夏なんです

 

日傘くるくる ぼくはたいくつ

日傘くるくる ぼくはたいくつ

 

空模様の縫い目を辿って 石畳を駆け抜けると

夏は通り雨と一緒に 連れ立って行ってしまうのです

モンモンモコモコの 入道雲です

モンモンモコモコの 夏なんです

 

日傘くるくる ぼくはたいくつ

日傘くるくる ぼくはたいくつ

 

はっぴいえんど / 夏なんです

 

 

 

 

 

 

夏がやってくるの画像