前回とルートを変えて絶壁の湾岸道路を走った。
風は強いが、紺碧の海と青い空が美しい。
道はアップダウンを繰り返している。
軽いギアでクランクを回転させているあいだは、視線の先に青空だけが広がった。
身体に心地よい負荷がかかる。
トンネルが見えてきた。
もうじき下りに変わる。
トンネルを出た先の道は左にカーブしている。
左足のクランクは0時の状態に、右足は6時の状態にしてカーブに備えた。
左側に体重をかけて自転車を傾ける。
オートバイと同じように、アウトインアウトでコースを取ってコーナーを抜けていった。
昼過ぎには、先週訪れた美しい橋に着いた。
この美しい橋は、昼と夜では異なる姿を見せてくれる。
この橋は両サイドに無数にパネルを張ってあり、パネル一枚一枚に照明を当てる事で、夜になると橋自体が輝きだすのだ。
橋の先にある小さな島に今日の宿を予約した。
海水浴場の横にある民宿だ。
部屋は小さなテーブルとテレビがあるだけの簡素な作りだが、窓からの眺めは白い砂浜と海が目の前に広がっていて、気持ちいい。
窓を全開し、部屋のドアも開けて風を通した。
畳の上で昼寝をする。
足先からひざ先に、胸元から頬へ、潮の香りを連れた風が通っていく。
一眠りした後は、人が少ない砂浜を裸足で歩いた。
釣りをしている人がいる。
キスを狙っているそうだ。
それにしても裸足になって砂浜を歩くなんて、何年振りだろう。
新鮮な魚を中心とした美味しい夕食をいただいた後、お風呂を済ませた。
部屋に戻ってTシャツとショーツに着替え、エスパドリーユを履いてまた外に出掛けた。
自転車に乗って、夕刻を迎えた美しい橋を見に行く。
ビールをお店で買って橋のふもとのベンチに腰かけて、夜が訪れるのを待った。