午前0時30分。
山に向かって車を走らせる。
市街地を抜けたところで窓を開けて風を取り込む。
ひんやりとした風が気持ちいい。
今夜も蒸し暑かった。
寝付けない部屋で過ごすより、標高1330Mの牧ノ戸峠の駐車場で仮眠を取ったほうが得策と考えたのだ。
BGMに「Brand X」の「LIVESTOCK」を選択する。
ヘッドライトの映した景色が後方へ流れてゆく。
哀愁を感じるギターの音色。
細かく譜割りされたベースが心地良い。
夜のドライブに似合う音楽だ。
不意に山のほうが流れ星のように光った。
遥か上方を車が走っている。
やがてカーブに差しかかると吸い込まれる様に消えていった。
標高を重ねていくと霧が濃くなってきて、やがて一寸先が見えないくらいになってきた。
どうにか駐車場の入り口を見つけて、ヘッドライトを消してエンジンを止めた途端に辺り一面が闇に包まれた。
午前5時30分。
あまりの寒さに目を覚ました。
ブランケットに包まっていたが、ここまで寒いとは思ってなかった。
風が強く、辺りの木々が激しく揺れている。
目の前の白い霧が速いスピードで流れてゆく。
今朝の山は荒れていた。
ブランケットに包まったまま、車の中で簡単に朝食を済ませた。
しばらく様子を見ることにした。
家から持ってきていた「赤毛のアン」を読む。
午前8時。
霧も晴れそうにないので帰る事にする。
折角だから温泉に入って行く事にした。
此処に来るのは5年ぶりくらいになるだろうか。
道端に車を止め、民家を抜けて田んぼの畦道を歩いてゆくと瓦屋根の小さな温泉が見えてくる。
料金箱に百円玉を入れて、温泉をいただく。
久しぶりに来たら、外壁と男女の仕切り板が黒く塗られている。
以前は格子状の仕切り板が甘く、普通に向こう側が見えていたが、塗り替える際に見直したのだろう・・・、仕切りがちゃんとされていた。(笑)