映画の中でPublic Image Ltd.の「This Is Not A Love Song」を聴いた。
20年以上聴いていなかった曲が、何の前触れもなく流れる。
当時は高校生だった私は、PILが大好きだった。
久しぶりのシングル盤だったので、レコード屋さんに買いに行くのが楽しみだった事を憶えてる。
ただ家に帰って聴いてみると、イメージしていた音とはだいぶ違っていた。
コマーシャルな感じがしたこの曲は、どうも好きになれなかった。
この頃は少ない小遣いの中からレコードを買いに行くのが一番の楽しみだっただけに、ハズレが出たのはとてもショックだったと記憶する。
この当時の私はどこにでもいるような、普通の高校生だった。
時を同じくして、映画監督であるアリ・フォルマンは、19歳のイスラエル国防軍の歩兵だった。
2006年に彼は兵役時代の友人と再会し、レバノン内戦での経験と関連した悪夢について聞かされ、自分自身がその頃の記憶を失ってしまっていることに気付く。
ぽっかりと抜け落ちた記憶を探す為に、兵役時代の別の仲間達と対話を重ねてゆく。
そして映画の最後に彼は虐殺の夜の記憶を取り戻す。
Public Image Ltd.の「This Is Not A Love Song」。
同じ曲でもその曲を聴いた背景はまったく異なる事に愕然とした。